はじめに

イタリア語の学習者は10年ほど前とくらべると、格段に数を増している。そのきっかけはさまざまであろう。イタリア料理の大好きな人、オペラやカンツォーネを原語で歌ってみたい人、一度は試合を見に行きたいと思っているサッカーファン、バイクや車などを通してイタリアデザインのとりこになった人、イタリアの町並みに魅せられ、建築や美術に興味を持った人、イタリアを旅して、その多様な風景に恋をした人、なによりもイタリア人のおおらかさが大好きだという人、などなど。きっかけはさまざまでも、イタリア語を学んでいくうちに、多くの人が言語そのもののもつ美しさ、豊かさに目覚め、感銘を受けたのではないだろうか。

イタリア語はもっとも詩に適した言語であるといわれる。そのせいか、高度に構築的であると同時に、複雑さをも合わせもつ。日本人の耳には聞き取りやすい、親しみのある音に惹かれ、「かんたんそうだな」と高をくくっていると、動詞の活用形の膨大な量に唖然とさせられたりもする。だが、その複雑さが豊かさの源となっていることはまちがいない。

初学者だけでなく、ひととおり文法は勉強してみたものの、ことばがなかなか口をついて出ないと、壁を感じている人のたすけとなるよう、貧弱な想像力を最大限に駆使し、なるべく多様な状況を設定することを心がけた。なかには、いくつか個人的な体験に基づくものもある。また、文法が苦手という人のために、かんたんな「文法チェック」のページを設けた。

遅筆ゆえ(株)語研の島袋さんにはたいへんご迷惑をおかけした。また、ネイティブ・チェックは日伊協会の同僚であるミケランジョロ・セヴェリーニ氏にお願いした。心より感謝している。

1999年3月
森口いずみ
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