はじめに

「韓国語が話せるようになりたい!」

思い立ったが吉日で始めた韓国語学習。ところが最近どうも勉強に身が入らない,ちょっと投げ出しかけています,といった方もいらっしゃるかもしれません。心配はいりません。学習者全員が経験することなのですから。そしてその山を越える方法もちゃんとあるのです。

言葉の習得は初級の段階で覚えるべきことは決まっています。いわば入門者が到達すべき山の頂は決まっているのです。その登頂過程で覚えることは限られたものでしかありません。あとは登山口の選択です。せっかくなら,楽しく効率よく登れる登山にしたいものです。

また初級を終え,次なる峰を眺めながらさまよっている状況の人にとっても同様のことが言えます。韓国語をショッピングで使いたい,食事で使いたいなど,次なる峰をはっきりと決めさえすれば,その状況で使う言葉は限られたものだけですから,おのずと登山口も決まります。また今まで別の登山道を登っていた人にとっても,自分に合った新たな登山口を選びなおすことで,今までの学習が決して無駄になることなく,意外にすんなりと目的の峰に到達することができるものです。

本書は「使える・話せる・韓国語」を習得するための,できるだけ有益で効率のよい登山道を目指しました。まず,文字の習得であるハングルをどう読むかにおいては,すべて日本語のなかにある音からヒントを得られるようにしました。実は日本語には50音以外にもさまざまな音が隠されているのです。入門段階の人にとってはハングルを効率よく習得する登山道になるとともに,初級を終えた人にとっても,ハングルの発音を見直す新たな登山口の発見につながるはずです。

そして実践会話用の例文は,機能別,そして場面別に,使用頻度の高い日常会話を豊富に収めました。いまは「ポケベル(삐삐)」という単語を覚える回り道は必要ありません。「アプリ(앱,어플)」という単語を踏みしめることのできる登山道のほうが有益です。語彙を増やしても増やしてもきりがないと感じる単語地獄に陥るのではなく,それぞれの人が自分の目指す峰へと上手に登るこ

とができる例文と出会えることが大切です。またそれぞれの例文には,必要な解説をコンパクトにわかりやすく添えてあります。ページをめくり進んでいくにつれ,おのずと応用発展へとつながり,会話の幅もどんどん広がっていくことでしょう。

本書の執筆は,(株)語研編集部の島袋一郎さん,西山美穂さんのきめ細かくそして気配りのある暖かいお力添えがなければ,決してなし得ることができませんでした。心よりの感謝を申し上げます。そして,東京・虎ノ門のアイケーブリッジ外語学院においては講師として,また韓国と日本の架け橋として大活躍していらっしゃる,李貞和(이정화 イ・ジョンファ)さん,廉善惠(염선혜 ヨム・ソネ)さんにも心からの感謝を申し上げます。おふたりの抜群の日本語力を有する韓国語ネイティブの力をお借りすることができなければ,このような充実した内容には決してなっていなかったでしょう。

ハングル地球村には実に多くの峰が存在します。本書が,ハングル地球村に入村された頼もしき仲間たちにとって,その数々の峰を楽しく克服でき,学習の継続,そして大きなステップアップへの一助となることができたならば,これほどうれしいことはありません。

2012 年春
日下隆博
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