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はじめに
本書は語研ネイティブ英語シリーズの第6弾です。日本人英語学習者が間違えやすい、または誤解している口語英語の文法・語法・語彙に関する200項目をQ&A形式で簡潔に解説し、さらに力試しに口頭で英作文をするというユニークな英文法のやり直し学習書です。これまでの5冊と異なり、英語のネイティブとの共著となり、第二言語話者の視点と母語話者の直観を融合させてパワーアップした自信作です。
本書には3つの目的があります。まず第1に、日本語母語話者が英語を学習する際、または実際に使用する場面で犯しやすい誤りを特定することです。著者の長年の主観的・客観的観察から得たデータを基に、最終的に200項目を収録しました。この中には、受験英語や学校の授業でよく強調される重要項目も含まれていますが、これまでほとんど指摘されたことがなかった項目が数多く扱われています。また、日本語母語話者だけでなく、世界の多くの英語学習者、さらには英語のネイティブスピーカーでさえ犯している誤りも含まれます。
第2に、教室で学ぶ英語と実際にネイティブが日常使っている英語との違いを明確にし、現実に沿った英語学習に目を向けることです。教室で学ぶ文法・語法・語彙と、実際のネイティブの会話に見られる文法・語法・語彙が異なることは以前から指摘されており、改善されつつあります。しかし、ほとんどメスが入れられていない領域として、日本の教育現場で教えられる文法と語法がイギリス英語を偏重してきたという事実です。例えば、中学校で現在完了の経験を教えるときに、「~に行ったことがありますか」はHave you been to ...?であると教え、Have you gone to ...?は結果を表すので経験には使えないと断定されています。実際には、米語ではHave you gone to ...?も用いられています。本書では、このような学校英語と実際の英語のギャップを埋め、同時に米語とイギリス英語の違いを示すことに努めました。
第3に、これまで学校ではあまり強調されてこなかった、またはネイティブですらうまく説明できないコミュニケーション上の重要な項目に光を当て、解説することです。例えば、次の対話文を見て、Bの応答として適切な語を( )から選んでみてください:
A:Do you believe what he said ?
B:Yes, I believe (it / that / so).
一見簡単なように見えますが、正解はitまたはthatです。soは使えません。I Believe so.は日常的によく使われる定型表現ですが、なぜDo you believe what he said ?に対する応答としては使えないのでしょうか。本書は、このように簡単そうに見えて説明が難しい項目も解説しています。
本書は、少しでもユーザーフレンドリーな学習書を目指し、大学で授業の一部として使用した際に学生から受けた質問や指摘に基づいて1年間修正を繰り返してきた、いわば現場を経て完成した教材です。また、読者の立場からの視点を重視し、完成原稿の段階で道西隆侑さん、小亀正人さん、浅野美紀子さんにはモニターとして一定期間使用してもらい、さまざまな意見を頂戴しました。最後に、本書の構成や収録項目について株式会社語研の奥村民夫氏にご助言をいただきました。この場を借りて心より深くお礼を申し上げます。
北に一星あり 小なれど その輝光強し
国立大学法人小樽商科大学言語センター准教授 Shawn M. Clankie