はじめに
日本人の英語学習意欲は非常に高く、とても多くの人々が英語をマスターしようと日々努力しています。その結果、日常英会話ならなんとかOKという人や、海外旅行でもどうにか英語で意思の疎通ができるという人の数が以前に比べるとずいぶん増えてきました。ところが、実際にその英語をよく聞いてみると、「あっ、この語句の使い方は正しくない」「日本語をそのまま英語に直訳している」といった誤りが数多くあるのもまた事実です。もちろん日本語を母語とするなら、完璧な英語を話す必要性はありません。日本人が日本語の誤りに気づかないまま使うこともあれば、英語のネイティブ・スピーカーが英語の誤りを犯すこともあるわけです。多少英語を間違えてしまっても、コミュニケーションに支障がない限りはそれほど重大に考える必要はありません。
しかし、せっかく英語を学んでコミュニケーションに役立てるのであれば、「誤りを少なくして、正しい英語を話したい、書きたい」というものも本音でしょう。急速に国際化の進む昨今、語学の能力を生かし、ビジネスや学業の場で英語を使う可能性も格段に増えています。そのような場合、誤りを回避するだけでなく、TPOに応じた適切な表現の習得を目指したいと願うのは当然のことです。本書(原著名 Common Errors in English from A to Z)は、外国語として英語を学ぶ人々だけでなく、ネイティブ・スピーカーでさえ使い方を間違えてしまうような日常英語の盲点を採り上げて、その問題点と正しい表現の仕方を辞典形式に検索しやすくまとめたものです。単に文法的に正しいか誤りかだけでなく、フォーマルな表現とカジュアルな表現の区別、アメリカ英語とイギリス英語における用法の違い、まぎらわしい表現といったカテゴリーに誤りのパターンを分類して、正しい英語の話し方、書き方をきわめて具体的に解説しています。
本書を活用すれば、どういった場でどのような英語表現を用いるべきか、これまで自分が「正しい!」と思いこんでいた表現にどんな誤りがあったのか、自分では理解しているつもりで使っていた語句、表現に実はどのような背景やニュアンスがあったのか、あるいはこれまでよくわからなかった語句、表現の正しい使い分けが理解できることでしょう。日常的に英語を話し、書く際に役立つレファレンス・ツールとして本書を使ってみて、「なるほど!」と納得できたら、該当する語句や表現を使って積極的に文を作り、口に出してみてください。きっと一皮むけた English speaker になっている自分を発見できることでしょう。
最後になりましたが、本書の翻訳にあたり、最初から刊行まで辛抱強くサポートいただきました(株)語研の奥村民夫様、本堂もも子様に心より深くお礼申し上げます。