※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
2002年の初版刊行以来,約10年にわたってTOEFL文法問題対策本として,受験者のみなさんと先生方から圧倒的な信頼をいただいてきた本書が,この度,(株)語研より『全問正解するTOEFL ITP® TEST文法問題対策』という新たなタイトルで復活しました。これはひとえに,これまでAmazon.co.jpやその他のサイト,ブログに寄せられた合計70以上にも及ぶ読者(受験者と先生方)リビューにも反映されている本書への熱烈な支持によるところが大きいと,筆者は心から感じております。
「正解にたどり着ける楽しさ」と「わかる喜び」を同時に体感させてくれるのが,まさに本書の最大の特長です。実際の本試験問題を約1,000題以上分析し,日本人の間違いのパターンを的確に分類して搾り出した《パワフル・コード(27個の合言葉)》は,いつもある種の驚きを持って読者に迎えられました。本書内に散りばめられた27個のパワフル・コードを使えば,すばやく正しい英文を完成したり,正しくない英語を的確に指摘したりするための「着眼力」を体得することができます。
さて,今回の出版は,幸運なことに(株)語研の島袋一郎編集部代表の知遇を得て実現しました。本書のコンセプトに対する島袋氏の深い理解と出版のためのご尽力に,この場を借りて心よりの感謝を表明したいと思います。尚,出版に際し,本書の解説におけるややくだけた語り口の修正を,島袋氏によほど申し出ようと迷いましたが,本書が生まれた現場である実際のクラスの雰囲気と生徒たちとのやり取りや勢いといった臨場感を消し去るのはもったいないと考え直し,なんとか思いとどまりました。
最後に,すばやく的確な英文把握力を身につけて日本の外へ打って出ようとする方々に申し上げます。本書を何度も読み直すことを通して,本試験会場や外国のキャンパスにおいて,驚くほど英文の構造が即座につかめ,今まで気がつかなかった英文の誤所がハッキリと浮かび上がってくるとき,パワフル・コードの切れ味は,いわゆる対策本の表面的なそれとは明らかに違っていて常に斬新であることを,快く痛感されるものと確信しております。
林 功
本書には全部で 27 個の Powerful Code(パワフル・コード)が散りばめられている。これらは,TOEFL ITP® TEST 文法問題を,可能な限り速やかに,そして的確に解くための,実戦に即した《暗号》とも《合言葉》とも言えるもの。各々の問題を解く場合に,もちろんいくつかのアプローチが可能だろうが,その中で最も速く,最もズバリと解ける方法をこのコード群が教えてくれると言ってもいい。
解法の大前提として「形に注目!」と早くも連呼したが(良いことは何度でもしつこく言うぞ!),じゃあ,次に何の形に注目するのかと疑問に思う人が当然出てくるはず。そこだ! 正しい英文を完成したり,正しくない部分を指摘したりするために,まさに「英文のどこに目をつけるのか」をズバッと告げてくれるのが,この Powerful Code なのだ。
筆者は,日本の高校 2 年生程度までの英文法 ・ 語法に関する知識を身につけた人なら,やり方次第で,誰でも TOEFL Section 2 で全問正解が達成できると本気で信じている。その根拠は,まず Section 2 では,「意味」より「形」が重要だということ。つまり,単語の意味は分からなくても英文の間違いに気づくことはできるから,単語力はそれほどハンデにはならないということ。実際,英語好きの社会人よりも,英語を習いたての中学 1 年生のほうが 3 人称 ・ 単数・現在の動詞の s が抜けていることに素早く気がついたりすることもあるわけだ。ただし,高 2 程度までの英文法 ・ 語法力で Section 2 満点を達成するためには,手持ちの知識をすべてもれなく,的確に活用できなければならない。そのために,自らのTOEFL 受験体験はもとより,TOEFL Section 2 本試験問題の内容,教室で生徒さんたちが陥る間違いの数々の傾向などを基に,先入観にとらわれず,見,聞き,考え,確認しながらコンパクトにまとめ上げたのがこの 27 個のコードである。実際,これらのコードを繰り返し反芻し脳裏に焼きつけることによって,TOEFLの文法全問正解を達成した生徒さんたちは数多い(もちろん筆者自身もです)。
模擬試験の後で解説を見て,「あっ,これ知ってたよ。何で気がつかなかったんだろう」と悔しい思いをした経験は誰にでもあるはず。これを筆者は教室などで《解説地獄》あるいは《アソーカ症候群》(名称の由来は,恥ずかしいのでくどくど説明はしません)と呼んでいる。最初に問題を見たときは,速やかに自分の知識と問題の関連に気がつくことができないのだが,後になって解説を読むと「ふむふむ,知ってる,知ってる,実は知ってたよ。もったいない」となるわけだ。手持ちの知識をすべて漏れなく,的確に活用でき,しかも,《アソーカ症候群》に陥らなければ,全問正解は決して不可能ではない。だからこそ,前章で述べた「解法の大前提」をさらに実戦向きに具体化し,細分化した,Powerful Code を十分に活用してほしい。27 個のコードを一つひとつ丁寧に自分の声に定着させることによって,《TOEFL の文法満点》というジグソーパズルをしっかり完成させよう。
なるほど《TOEFL の文法満点》を一幅の大きなジグソー ・ パズル画だとするならば,この絵を完璧に仕上げるためには 27 枚のジグソーの一片一片を確実に埋めていく必要がある。最初からピッタリ収まる一片もあるだろうし,どうしても最後の方まで残ってしまうジグソーのカケラもあるだろう。この最後の方に残る,どうしても巧く収まらない数片こそが,つまり読者の苦手コードだ。具体的に言うと,まず Level Check でそのコードヘの自分の感触を確かめ,苦手そうなら特に念入りに説明を熟読すること。そして《応用演習》終了後,必ず間違った問題のコードをチェックし,自分はどのコードが苦手なのかを確認し,集計して,もっとも誤答の多かったワースト 5 コードのページをもう一度読み直してみよう。必ずその過程が終わって,可能な限り苦手コードを脳裏&マブタに焼きつけてから Practice Test に進んでほしい。ただ闇雲に問題を解くのは,悪い解法(例:和訳を気にしすぎるとか)を定着させるだけで逆効果だから,くれぐれも避けたいやり方だ。もしもっと念入りに迫りたければ,Practice Test 2 を解き終わった時点で再び苦手コードの集計を行い,また脳裏&マブタ&耳の奥への焼きつけ作業をやってから残りの Practice Test に挑んでほしい。間違った問題のパターンとその対処法(コード)をしっかりつかみ,それと似た問題に遭遇したときに素早く活かすこと,これが常に《TOEFL の文法満点》への極意ですよ。Okey-doke?
- Level Check でコードの感触と自分との相性を確認
- 相性のよくないコードの解説は特に熟読
- 《応用演習》を解答し間違った問題のコードを集計
- 誤答の最も多かったワースト 5 コードの定着やりなおし
- PracticeTest 1 ~ 2 を解答し,③④と同じ作業完結
- PracticeTest 3 ~ 4 を解答し,誤答が少ないのに驚嘆(?)
- 本試験で Powerful Code の威力確認
例えば「-ly で終わる形容詞もある」とか「than が出てくる 3 つの場合」,「likeと alike の違いは」など,ちょっとした違いだが,あいまいで未解決,しかも正否を分けるという 10 の項目が,Crux(重要ポイント)として関連ページに挿入してあります。Powerful Code を知識面からサポートする隠し味ですから,コードを焼きつけるかたわら,これにも十分に気を配ってください。
早大一文中退。サザン・イリノイ大英文科卒。ワシントン大学院比較文学科修士課程修了(MA)。現在、留学試験専門学校 LINGO L.L.C. 代表。元筑波大学大学院共通講座客員講師。長年にわたって、高校生からビジネスマンまで、TOEFLテスト対策を中心に英語を教え続け、「ヒゲの林」の愛称で親しまれている。今では、10,000人以上の教え子が国内外で活躍中。
主な著書に、『CD BOOK TOEFL® TEST 必須英単語5600』『CD BOOK TOEFL® iBT 頻出英単語』『CD BOOK アメリカの中学教科書で英語を学ぶ(正・続篇)』『CD BOOK 英語の出し入れ実践トレーニング』『IELTS 必須英単語4400』(以上、ベレ出版)、『ETS 公認ガイド TOEFL® iBT CD-ROM 版(監訳)』(ETS/McGraw-Hill)などがある。