はじめに

　アラビア語はアラビア半島から北アフリカにかけての広い地域で用いられている言語です。そのため方言も多く，またそれがアラビア語の魅力のひとつでもあるのですが，本書は「正則アラビア語（フスハー）」と呼ばれる一種の共通語を対象としています。

　イスラームの聖典クルアーン（俗に言うコーラン）が正則アラビア語で啓示されたことから，イスラーム文化とアラビア語は切っても切れない関係にあります。同時に，アラブ世界にはキリスト教などイスラーム以外の宗教を信じる方々もいらっしゃいますし，イスラーム以前の遺跡も数多く残っています。また，同じアラブ世界であっても，地域によって異なる文化があります。

　本書に挙げた 500 語やその関連語の中には少し難しいものも含まれていますが，単に基礎的な単語だけでなく，こうした広く奥深いアラブ世界やアラブ文化を理解するのに欠かせない単語を集めました。加えて，アラビア語文法の要点を文法復習としてまとめてあります。

　なお，本書でカタカナで示された発音は，語尾を省略した自然な話し言葉の発音に近いものです。正確な格語尾や動詞活用語尾などは，これぞアラビア語学習の肝でもありますので，アラビア文字やそれに付された発音記号でしっかり確認してください。もちろん，アラビア語の発音はカタカナで表しきれるものではありません。付属音声で正しい発音を会得してください。

　本書の執筆にあたり，日本で長年アラビア語教育にたずさわってこられたミーラード・ラヒーミー先生には，アラビア語の例文を丹念にチェックしていただき，ナレーションも担当していただきました。感謝いたします。また遅筆な著者に忍耐強く対応してくださった語研編集部の西山美穂さんには厚く御礼を申し上げます。

　この本が皆様のアラビア語学習やアラブ世界理解の一助となることを願ってやみません。