1章の「総説」でドイツ語文法の全体像を把握し,2章以降で個別の文法項目について見ていく構成にしています。
項目の配列は,語レベルから句,文レベルに展開し,ドイツ語の文構造を順次性をもって理解していただけるようにしてあります。
さまざまな項目において,重要なものは「総説」に戻れば書いてある仕組みにし,リファレンス性を高める工夫をしました。
〈初級者向けの工夫〉
各文法項目で,最初の見開きは初級者向けの内容になっています。大学の初級クラスで教えられる内容に近づけ,簡易な説明を心がけました。
※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
本書は初級者から上級者までこれ一冊で必携となることを目指しました。
本書は全5 章(I 章~ V 章)で構成されています。I 章は「総説」です。「総説」はドイツ語の〈取り扱い説明書〉ともいうべきもので,ドイツ語文法の特徴的な部分や,ほかにも品詞の説明,文法用語など,ドイツ語文法を紐解く上で必要な基礎的知識をまとめています。「総説」でドイツ語文法の輪郭を概観し,II 章以降の「各論」で,個別の文法について見ていく(「森を見て,木を見る」),という構成にしています。II 章は「名詞編」です。ドイツ語は名詞(冠詞・形容詞)の格変化が豊かな言語です。動詞の人称変化(主語に応じた語尾変化)も豊かですが,動詞の人称変化の場合,主語が明示されることと重複しています。その点,名詞は,文のどこにあってもそれが主語(や目的語)とわかる必要があり,その形(変化)がたいへん重要です。本書では,まずドイツ語の「名詞」まわりの文法をまとめています。III 章は「動詞編」です。動詞には活用(人称変化,時制を区別するための語形変化など)があります。動詞,助動詞,準助動詞についての活用等をまとめています。IV 章は「文編」です。動詞に目的語となる名詞句を添えて動詞句を作り,それが述語となります。そこに主語となる名詞句を添えると文になります。V 章は「その他」です。
動詞の配置によって文タイプが区別されることや,動詞句内の語句の順序などは総説に書かれています。さまざまな文法項目において,重要なものはその都度,総説に戻れば書いてある,という仕組みです(必要に応じて「→◯ページ」のように,リファレンス性を高める工夫もしてあります)。本書は文法に特化した便覧となっており,発音や文字については扱っておりません。
初級者向けの工夫
各文法項目で,最初の見開きは初級者向けの内容になっています。それぞれ,キーセンテンスともいうべき端的な例文とともに,大学の初級クラスで教えられる内容に近づけ,簡易な説明を心がけています。ただし,本書はいわゆる文法便覧ですので,項目の配列は一般的な参考書や教科書のよう(伝統的な項目順)にはなっておらず,語レベルから句,文レベルに展開し,ドイツ語の文構造を順次性をもって理解していただけるようにしてあります。ドイツ語文法を初めて学ばれる方は,「総説」は後回しにして,まず各課の最初の見開きでドイツ語の個別の文法項目のエッセンスを見ていただき,その後「総説」を見ながら全体像の把握に進んでいただく(「木を見てから森を見る」)のがおすすめです。
なお,初級者向けの見開きページでは,例文の和訳が自然な日本語になっていない場合があります。これは,その単元で扱う文法事項の特徴を可視化するためのもので,和訳を自然な日本語にしてしまうと,当該の文法事項の特徴が見えなくなることがあるためです。
コラムも多めに設けました。ドイツ語の歴史や発展的な文法事項を扱ったコラム,あるいはドイツ語圏の文化や流行について触れたコラムもあります。
本書の執筆にあたり,大阪公立大学の信國萌さんから言語学者の視点で助言や示唆をたくさんいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。株式会社語研編集部の宮崎喜子さんには企画の段階からたいへんお世話になりました。
みなさんのドイツ語学習の一助となりますよう祈念しております。