※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
本書は、ビジネスマンの英語力を測定するTOEIC(Test of English for International Communication)と北米の大学・大学院入学に英語の非母語話者に課せられるTOEFL(Test of English as a Foreign Language)及び英検(実用英語検定試験)準2級、2級、準1級、1級で出題される可能性のある2000単語に、過去の出題データに基づいて頻度を示した受験対策用のボキャビル教本です。
従来それぞれの試験用にバラバラであった対策本と違い、本書は6つの異なる試験での頻度を一挙に示した斬新な構成となっています。単語のレベルから現在の自分の英語力を知ることもできます。また、学習者のみならず指導していらっしゃる教員の方々にも一冊は持っていたい便利な参考文献となるでしょう。
定期的に英語資格試験を受けることで英語学習がプラン化され、ほどよい緊張感が生まれます。資格試験は、これから英語を一生懸命頑張って学習していこうとしている自分への試練であり、また取得すれば自分自身の努力への褒美になると考えることで、学習継続の強力な動機づけとなるでしょう。
英語の学習の目標は、大目標、中目標、小目標の3つのレベルに分けられます。大目標とは将来、自分が最終的に達したいと考えている目標であり、ネイティブのレベルまたはそれに近いニア・ネイティブのレベルを目指す人もいれば、日常会話に不自由しない程度でよいと考えている人もいるでしょう。中目標とは、数か月から数年で達すべき実現可能と思われるレベルです。小目標は、数週間でこれこれの教材をやるとか、単語2000語を覚えるというような、比較的短期間で達成できる具体的な設定目標、または学習内容です。
大目標と小目標は明確に定めるのが容易であるのに対して、中目標はなかなか難しいのですが、特定の資格試験の受験こそ中目標にすべきではないかと思います。英検では、ある級に合格すれば2年以内に次の級に合格しようという目標が立てられます。TOEICとTOEFLでは、級ではなくスコアで自分の実力がわかるので、次回は500点(TOEIC)、あるいは190点(TOEFL)を超えようというように具体的な目標設定ができます。
私は指導する大学生に対して、中目標としてまず英検2級を取得し、卒業までに準1級とTOEFL213点(旧550点)を取るよう励ましています。大目標については、“Aim high”という言葉にあるように、ネイティブに一歩でも近づく努力をするように言っています。また、私自身もこの目標を持っています。
英語力は、満足した途端に化石化(fossilization)してしまうというのが私の持論です。「初心忘るべからず」という言葉がこれほど当てはまる人間の営みは他にないでしょう。常に自分の英語力を批判的に評価し、改善点を探し、対策を立てることが大切です。できればそれを厳しく監視してくれる友人や指導者がいれば理想的です。また、時にひっそりと自分自身をほめてあげることも大切です。
英語資格試験の受験は、いわばこの厳しさを継続させてくれる絶好のチャンスなのです。一喜一憂することで皆さんは刺激を受け続け、目標に向かう決意がより強固なものとなるでしょう。本書は一冊で複数の英語資格試験に対応できるようになっているので、目標達成まで手元に置いて徹底的に使いこなしてください。皆さんの英語学習の大いなる一助になれば幸いです。
最後に、本書の企画からTOEICとTOEFLのデータ、配列まで助言していただいた(株)語研の奥村民夫氏に心からお礼申し上げます。
小樽商科大学大学院ビジネススクール教授
小林敏彦
小樽商科大学商学部経営法学コース卒(大谷良雄ゼミ:国際法専攻),ハワイ大学マノア校大学院英語教育研究科修了(MA in ESL),ハワイ州会議通訳者免状(同時・逐次)取得。ハワイ大学日本語講師を経て,現在,国立大学法人小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻(OBS:Otaru Business School)教授。担当は「中級ビジネス英語」。
TESOL学会,大学英語教育学会(JACET),映画英語教育学会(ATEM),時事英語学会(JACES)会員。柔道2段,コバ英語ジム(KEG:KOBA English Gym)主催。趣味は洋画と筋トレ。
著書に『はじめての英語ニュース・リスニング』『日常英会話ネイティブ表現』『会話する英文法Q&A』『英会話フレーズ600』『英語で言ってみるMy Life』『ネイティブがよく使う英会話表現ランキング』(以上,語研),『外国人の先生と話そう』(大修館書店),『映画英語教育論』(スクリーンプレイ社),『かけがえのない健康と環境』(成美堂),『英会話フレーズ2220』(三修社),『英語リスニング教材開発の理論と実践』(小樽商科大学出版会)ほか多数。主要論文に,“Native and Non-native Reactions to ESL Compositions”(TESOL Quarterly, vol.26, No.1, Spring 1992)がある。