- 一語動詞⇔句動詞の使い分けを,コーパスデータとわかりやすい例文を駆使して解説!
- 5 億語の英語コーパス COCA(米語),BNC(英国語)の頻度上位 150句動詞をすべて収録のうえ,それをアイコンでわかりやすく表示!
- 一語動詞⇒句動詞への言い換えと,句動詞の使い分けを左右する不変化詞(副詞 ・ 前置詞)のニュアンス解説が特長!
5億語のデータベースから、英語コミュニケーションでもっともよく使われる句動詞400を抽出。フォーマルでかたくるしい一語動詞での表現ではなく、よりカジュアルでニュアンスの伝わる句動詞を使ったインフォーマルで「普段着」の表現を学んで会話の幅を広げましょう。
※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
日向清人の英語雑記帳(2):文法こぼれ話を中心に Kindle版
日向清人の英語雑記帳(3):話す英語と書く英語の実際 Kindle版
日向清人の英語雑記帳(4):実用英語の雑学 Kindle版
ワンコインでわかる英語の句動詞 Kindle版
はじめに
動詞take に副詞off を組み合わせたtake off は「離陸する」という意味です。動詞go に前置詞over を組み合わせたgo over は「~をざっと見る,振り返る」という意味です。あるいは,break+down という字面から意味がわかりやすいbreak down(故障する)に対して,let+down という字面からは意味が読み取りにくいlet down(~をがっかりさせる)という表現もあります。こうした動詞と副詞・前置詞の定型的組み合わせを本書では句動詞(phrasalverbs)と総称します。
句動詞は一筋縄でいかない学習項目ですが,英語を話したり,書いたりする場合には,本書で取り上げる程度の頻出句動詞はぜひとも会得する必要があります。実際,ケンブリッジ英検やIELTS でも出題の範囲内です。「英文に使われる動詞の3割以上を句動詞が占める」と言われるほど,句動詞は英語の語彙の重要部分を占めているからです。シェークスピアの全作品を通して5,000 以上の句動詞が使われているぐらいで,「英語を英語らしく話す」ために不可欠と言えそうです。
また,海外TV ドラマなどを見ているとわかりますが,句動詞は話し言葉で実によく使われるうえ,E メールや雑誌・新聞の記事のようなインフォーマルな書き言葉でも頻出しますから,主要句動詞はしっかりおさえておかないと,いくら英語を勉強しても効果を実感できません。さらに,コミュニケーションないし人間関係という視点から言えば,句動詞で言うのが普通なのに,いつも一語動詞で済ませようとする人は,時間や場所におかまいなく堅苦しい格好をして取り澄ましているかのような,奇異な感じを相手に与えます。
本書は,以上の具体的ニーズを踏まえて,アメリカ英語とイギリス英語両方の5 億語を超えるコーパス(用例データベース)の研究からわかっている最頻出上位150 句動詞とそのバリエーションを合わせた,およそ400 の頻出句動詞を取り上げ,必要な句動詞を一語動詞と対照しながら,効率よく学べるよう工夫してあります。生きた英語の習得に活用してください。
A | ・・・・・・・・・・ | 20 | M | ・・・・・・・・・・ | 130 |
B | ・・・・・・・・・・ | 36 | N | ・・・・・・・・・・ | 134 |
C | ・・・・・・・・・・ | 39 | O | ・・・・・・・・・・ | 136 |
D | ・・・・・・・・・・ | 59 | P | ・・・・・・・・・・ | 141 |
E | ・・・・・・・・・・ | 80 | Q | ・・・・・・・・・・ | 151 |
F | ・・・・・・・・・・ | 99 | R | ・・・・・・・・・・ | 152 |
G | ・・・・・・・・・・ | 108 | S | ・・・・・・・・・・ | 184 |
H | ・・・・・・・・・・ | 111 | T | ・・・・・・・・・・ | 207 |
I | ・・・・・・・・・・ | 113 | U | ・・・・・・・・・・ | 214 |
J | ・・・・・・・・・・ | 123 | V | ・・・・・・・・・・ | 219 |
K | ・・・・・・・・・・ | 124 | W | ・・・・・・・・・・ | 220 |
L | ・・・・・・・・・・ | 126 | Y | ・・・・・・・・・・ | 227 |
1.一語動詞⇄句動詞の言い換えが簡単にわかる
一語動詞⇄句動詞の言い換えがすぐに検索できるように,400 の句動詞は対応する一語動詞のアルファベット順に配列してあります。受験英語で覚えた堅苦しい一語動詞を句動詞,つまり「普段着の英語」で言うにはどの表現を用いるべきかが,見出し語と例文を通じてすぐにわかります。逆に,巻末には句動詞から一語動詞を検索できる索引を用意し,TPO に合わせて改まった言い方をしたい場合にどういう一語動詞を使えばよいかがわかるようになっています。「たばこの火を消す」と言いたいとして,put out と言えばいいものをextinguish と言ったりするのは,芝居がかっていて滑稽なだけでなく,教養をひけらかす結果となり,感じが悪いとの専門書の指摘があるぐらいで,状況に合わせて一語動詞と句動詞を言い換えられることは重要なスキルです。なお,句動詞はインフォーマルとされてはいますが,だからと言って,アカデミックライティングや法律文書などの硬い実務文書で使われないというわけではありません。omit という一語動詞より leave out という句動詞のほうが,アカデミックライティングでは多く使われるというデータもあります。
2.目的語が入る位置を明示している(分離 OK 型と分離 NG 型)
動詞本体と副詞・前置詞の間に何も入れられないタイプの句動詞(目的語をとらない自動詞型の句動詞と,このタイプに属する他動詞型の句動詞)と,目的語が初出か既出か,あるいは目的語が代名詞かどうかによって,動詞と副詞の間に目的語を入れられるかどうかが決まるタイプの句動詞を明確に示してあります。
例えば,「彼は急いでジャケットを着た」と言いたいとして,そのジャケットのことを聞き手が初めて耳にする場合であれば,
He put on his jacket in a hurry.
ですが,聞き手がどのジャケットの話かわかっている場合は,
He put his jacket on in a hurry.
というふうに,目的語の his jacket は動詞 put と副詞 on を分離してその間に,つまり副詞の前に入れることができます。
これはつまり,分離 OK 型の句動詞では,副詞の位置は目的語の情報構造上の位置づけ次第ということです。「話をわかりやすくするためには,未知の事項より先に既知の事項から始めるべし」というコミュニケーション上の経験則に従い,目的語が既知の情報を表しているときは,副詞の前,つまり動詞と副詞の間に入れることができます。目的語が代名詞の場合は既知の情報であることが確実ですから,原則として動詞と副詞の間に入れます。
本書では,次のように表示しています。
自動詞型 | 常に《let up》の形で使う。自動詞型なので,目的語はとらない。 | |
自動詞型(他動詞用法もある) | 常に《slow down》の形で使う。この意味では自動詞型なので,目的語はとらない。 | |
他動詞型(動詞+前置詞) | 常に《go over +名詞(句)》の形で使う。 | |
他動詞型(動詞+副詞) | 常に《get down +名詞(句)》の形で使う。ただし,目的語が代名詞の場合は,例外的に《get +代名詞+ down》の形が可能。 | |
他動詞型(動詞+副詞) | 目的語が初出の場合は《take in +目的語》,目的語が既出の場合は《take +目的語+ in》も可。目的語が代名詞の場合は必ず《take+代名詞+ in》の形で使う。 | |
他動詞型(動詞+副詞+前置詞) | 常に《go along with +名詞(句)》の形で使う。 |
3.句動詞の意味につながる副詞のニュアンスを解説している
動詞と組み合わされている副詞のニュアンスを説明しました。句動詞の句動詞たるゆえんは,実は動詞よりも副詞のほうにあります。副詞に注意を払い,例えば get off での off の解説を読んだら,同じような off が使われている例を探すという作業を繰り返すことをお勧めします。これにより,メタファー(比喩)でのつながりがわかり,英語のセンスが飛躍的に向上するはずです。そのために,副詞から句動詞を検索できる索引も巻末に用意してあります。なお,put up with sth のように純然たる《動詞+副詞》のセットに前置詞が組み合わされている場合,「with は前置詞なので,その前に副詞(句)を入れることができる」と説明している部分があります。これは She puts upwith my annoying demands.(彼女はわたしの腹立たしくなるような要求を我慢してくれる)という表現を例に言えば,always のような一語副詞であれば,She always puts up with my annoying demands. のように動詞の前に入れることができますが,同じ意味の副詞句である all the time だと動詞の前に入れることができず,She puts up all the time with my annoying demands.のように,前置詞の前にそれを入れる「スロット」があることをお知らせするための説明です。
4.5 億語の英米語データベース最頻出の 150 句動詞を明示している
世界最大のアメリカ英語データベースCorpus of Contemporary AmericanEnglish と,イギリス英語データベース British National Corpus(計 5 億語)での頻度上位 150 位までの句動詞はすべて収録しています。見出し語の前にのアイコンで示し,句動詞は大きい活字で表示しています。これらの最頻出句動詞を優先して学ぶことで,学習効率が高まります。
5.句動詞の強勢を表示している
見出し語の句動詞にはアクセント記号を付け,強勢を置いて発音すべき語を明示しています。ˈ が第一強勢(もっとも強く発音する),ˌ が第二強勢(やや強く発音する)を示します。句動詞の発音の詳細については次の解説を参照してください。
慶應義塾大学大学院修了。12歳まで海外在住。慶應義塾大学講師兼同大外国語教育研究所所員。元ケンブリッジ大学英語検定面接委員。
著書に『即戦力がつく英文ライティング』『即戦力がつくビジネス英会話』『知られざる基本英単語のルール』(いずれもDHC刊),『外資の社内英語ビジネスに効くパワフル動詞460』(共著 ジャパンタイムズ刊),『ビギナ-のための法律英語』(慶應義塾大学出版会)など,ビジネス英語,法律英語の著作多数。
英語学習者向けブログ「ビジネス英語雑記帳」
http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/
Twitterアカウント
@hinatakiyoto