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※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
まえがき
中学と高校で6年も英語を学習したのに、簡単な単語を口にしてもわかってもらえず、結局相手とのコミュニケーションが持てずに悔しい思いをしたことのある方は多いと思います。発音さえしっかりしていれば、いちごでもある程度の意思疎通が可能であるのに、本当に残念です。このような経験をしたことがあると、どのような発音なら通じるのか、どのようにして音を出せばよいのかということに、大変関心が強くなるものです。
リスニングの力は、継続して聴き続けることでかなり身に付きます。スピーキングも、良いモデルをまねすることで。かなりのレベルまで到着することができます。ですが、発音の仕組みを理解しながら音に出すという練習をすると、音のルールが自然に身に付き、まねをしたときの例以外の場合にも応用することができます。基本から、しかも体系的に学習することは、「急がば回れ」の格言のように、次のステップに移るスプリングボードになるはずです。
“I bought a hut in Karuizawa.” と言って、「軽井沢にヒュッテ(小屋)を買った」と言ったつもりが、「軽井沢で帽子( hat )を買った」という意味にしか表せないとくやしいですね。ただ、[ʌ]と[æ]の違いを区別するだけでよいというのに。
このような方々のために、わかりやすく、しかも基本的なものだけを体系的に記述しました。音の基礎訓練は多少単調さを伴うものですが、イラストを見ながら、カタカナ表記を参考にしながら、想像の世界を広げて、ひとつひとつ征服していってください。単語で正しく発音ができるようになったら、文の中で、しかもアメリカ人の話すふつうの速さで言えるように練習しましょう。本書はここまでを到達目標にしていますが、より英語らしい話し方をするには、英語のリズムやイントネーションなどを身に付け、Englishness(英語らしさ)を自分のものになさることを願っています。
CONTENTS
目次
INTRODUCTION
本書の構成
本書には以下3 点の特徴があります。
本書の特徴
本書では,第1 章で16 個の母音と第2 章で24 個の子音を取り上げ,それぞれの発音の基礎を学びます。第3 章で句やふつうの話し言葉の中に表れる,さまざまな音の変化を学び,よりいっそう英語の発音の仕組みについての理解を深めながら,正しい発音を身に付けるように組まれています。
本書で取り扱う発音は標準的なアメリカ英語です。ただし,26 ページの母音8 の見出しの発音記号に関しては,英和辞典の多くが[ʌ] の表記を用いているため,イギリス英語の[ʌ] のほうを大きく表記し,アメリカ英語の[ə́] は小さく併記するにとどめました。また,米音と英音の違いについての知識が必要な音については,それぞれ解説してあります。
[r] や[ə] などの発音記号中のイタリック体(=斜体)は,省略できる音を表しています。また,長母音に用いられる[ː] の記号が[(ː)] のようにカッコに入っている場合は,長母音が短母音でも発音されることを表しています。
テキストの構成
- 見出し発音の仕方がイメージできるように,わかりやすいたとえやコツを提示しました。たとえは楽しいイラストになっています。
- 正面の口の絵前から見たときの口の開き具合,唇の形,舌の様子を見ながら,発音のコツがつかめるようになっています。
- 横から見た口の断面図母音は,―・―・―で示された十字型の基点を目安に,口の内部の舌の高さや,口の開き具合を,ほかの母音の音と比較しながら学習できるようになっています。子音は,調音点(丸いマーク)で音を出す位置の確認,矢印で息の流れがイメージできるようになっています。
- 発音の仕方難しい専門用語をなるべく避け,できるだけやさしく,わかりやすい言葉を用いて,簡潔に説明しています。
- Listen&Repeatそれぞれの音を含むやさしい単語と,日常会話に使える簡単な例文で,その音を練習できるようにしました。
- CONTRAST復習の意味で,似た音との比較練習ができるようになっています。
- PRACTICE日本語のカタカナ英語との比較や,日本人の苦手な発音などをわかりやすく説明しています。
- ADVICEその音を出すためのポイントを,わかりやすく説明しています。
- 聴き取りクイズ日本語のカタカナ英語が,実際には英語のどの発音なのか,クイズ形式で確認できるようになっています。
- 母音・子音の聴き取りテスト第1章の終わりと第2章の終わりに,復習の意味でCONTRASTの総合練習をするようになっています。
NOTES OF TERMS
専門用語の解説
母音アイウエオを発音するとき,肺から送られた空気が,のどぼとけの内側にある声帯を,振動させて息が声になり,その声が唇,歯,舌などで止められることなく,口から出る音を,母音といいます。声を伴うので,有声音です。言い換えれば,母音はすべて有声だということになります。日本語にはアイウエオの5つの母音しかありませんが,英語の母音は考え方によって違ってきますが,少なくとも13 個,二重母音や三重母音なども入れると20個前後あるとも言われています。このように数多く分類される母音は,次の3 つの条件の組み合わせによるものです。
- 口の開きが狭いか,広いか,その中間かによる。
- 舌の一番高くなる所が前のほうか,後ろのほうか,あるいはその中間 かによる。
- 唇の形が,丸く突き出した形か,横に引っ張った平らな形かによる。
以上が母音の分類基準です。
子音肺から送られた空気が「声」や「息」になって出るとき,唇,歯,舌などで,さまたげられた後,口や鼻から出てくる音を子音といいます。英語の子音は,ふつう24個あると言われていますが,その種類は次の3つの条件で分類されます。
- 有声か無声か。
- どの位置で発音されるか。
- どのように発音されるか。
以上のことは
- 声になるか息になるか。
- 調音点はどこか。
- 発音の方法はどうなのか。
とも言い換えられます。調音点は唇と歯であれば「唇歯音」,上下の歯であれば「歯音」などと呼ばれています。発音法が息を破裂させる方法であれば「破裂音」([p/b],[t/d],[k/g]),摩擦することで生じる音であれば「摩擦音」([f/v],[θ/ð],[s/z],[ʃ/ʒ],[h]),破裂と摩擦の両方の要素を伴う場合は「破擦音」([tʃ/dʒ]),舌の両側から息が出る「側音」([l]),鼻から息を出す「鼻音」([m],[n],[ŋ])があります。
半母音[r],[w],[j] の音は,それぞれ[x],[u],[i] に近く,弱い響きがあるので,母音の要素を持っています。しかし,その音は母音のようには長く続かず,すぐに次の音に移るので,半分は母音の要素を持っている子音として取り扱われています。
主な発音器官
1. | 唇 | 7. | 前舌 |
2. | 歯 | 8. | 後舌 |
3. | 歯茎 | 9. | のどひこ(口蓋垂) |
4. | 口蓋 | 10. | 喉頭蓋 |
5. | 舌の先 | 11. | 声帯 |
6. | 舌の端 |
昭和女子大学助教授(英語音声学)を経て、神田外語大学教授(英語音声学、スピーチコミュニケーション)となる。1970年ハワイ大学大学院M.A. 取得。NHK上級基礎英語講師(平成3年4月ー5年3月)を務める。