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※ためし読みの色は実際の書籍とは異なります。
はじめに
日常生活において使用されるドイツ語の基礎語彙は 4,000 語程度であるとされています(研究論文によっては 5,000 語程度とするものもありますが,概して 4,000 ~ 5,000 語であると言えます)。日本で刊行されている主な独和辞典では,これら 4,000 語(辞書によっては5,000 語)程度が最重要単語・重要単語として,たとえば赤字で示されたりして,わかりやすく編集されていることが多いです。大学入学共通テストの「ドイツ語」でも,出題に使用される語彙は,基本的にはこれら最重要単語・重要単語でカバーできるように工夫されています。語学テストなどにおいては,使用される語彙は測りたい習熟レベルに応じて設定されます。一方で,私たちが日常的に触れることができるドイツ語圏の新聞記事や論説などでは,ドイツ語を母語とする一般成人であれば知っているはずの語彙は,それが基礎語彙でなくてもごく自然に使われています。
本書は,基礎語彙(一般的な独和辞典で最重要~重要単語とされているもの)以外を見出し語としてピックアップした単語集です。見出し語の項目数は 360 語です。概ね,「独検」(「ドイツ語技能検定試験」;公益財団法人ドイツ語学文学振興会主催)2級以上,ドイツやオーストリアの団体が実施するドイツ語検定試験 B1 以上にチャレンジする際に,基礎語彙の上にさらに積み増しする必要があると思われる語群であると言うことができます。また,上述の通り,ドイツ語圏のメディアで発信される情報を理解する上でも必要となる語群でありましょう。
本書の主な特徴は次のとおりです:
- 見出し語は可能な限り分野別・場面別に分類しました。
- すべての見出し語に関連語を2つずつ添えています。関連語は,類義語や対義語,派生語など見出し語によって異なりますが,その中でも類義語を多く掲載しておりますので,類語集としてもお使いいただけます。ただし,関連語には基礎語彙も含まれます。
- 見出し語にはすべて例文がついています。例文は,可能な限り,実際のドイツ語圏の新聞記事などを参考にしています。記事のそのままの引用ではありませんが,例文を見ると,ドイツ語圏の日常がなんとなく垣間見られると思います(話題として,サッカー・音楽・法律・経済・産業などが多いかと思います)。
- 例文は,見出し語の使用例ではありますが,単文として読むときの文法知識の確認にもなります。この観点から,例文の解説には必要に応じて文法面のことも書き添えるようにしています(たとえば,文頭に主語以外の名詞が主題として配置されている,主語が有生物ではなく無生物である,自動詞なので目的語が 4 格ではなく 3 格である,2 格支配である…など)。
- 例文には和訳が添えてありますが,直訳調にならずナチュラルな日本語にしてあります。そのため,和訳からドイツ語表現に戻すような,和文独訳の素材としても活用いただけます。巻末には本編中の例文による和文独訳のページを設けておりますので,ぜひチャレンジしてください。なお,例文を直訳に忠実に紐解く解説は,例文解説のところで書くように心がけました。
- 見開き2ページに4つの見出し語が掲載されています。その4つの語が散りばめられた読解テクストがあります。数行にまたがるやや長めのテクストを読み解く練習をしていただけます。
本書が,ドイツ語を学習されるみなさんのお役に立てば幸いです。
東洋大学法学部教授(博士(学術))。専門はドイツ言語学・ドイツ語教授法。ポツダム大学,ザルツブルク大学などで在外研究。
著書に『わたしのドイツ語 32 のフレーズでこんなに伝わる』『中級学習者のためのドイツ語質問箱 100 の疑問』(白水社),『ゼロからスタートドイツ語文法編』(J リサーチ出版)など。
2016 年 10 月〜12 月(第 1 期),および 2018年 10 月〜2019 年 3 月(第 2 期)に,NHK ラジオ講座「まいにちドイツ語応用編(ドイツ語発見の旅 1・2)」を担当。